平城君。独立するなんて凄いね。
この言葉を聞いて私はとても驚いた。なぜかというと、その言葉を発したのは、A社時代に私が参画していたプロジェクトのかなり上席の方だったからだ。
仕事はスーパーマンのようにできるし、年収は私の数倍はもらっているといような人がだ。
私の在任中には、この人から褒められたことは殆ど無かったし、私のことを評価してくれているとは、思っていなかったというのもある。
それは私が退職する前の、上司から最後のフィードバックを頂く場でのことだった。
場所は東京の赤坂にある高級ホテルのラウンジ。
アロマの香りが漂う吹き抜けの空間が心地よく、ジャズバンドの生演奏がうるさすぎず、快適な空間を演出してくれている。
一瞬私は、狐につままれたような感じがしたが、その言葉が発せられた理由はすぐにわかった。
上司は続ける。
『僕も今はこんな立場についているけど、
独立して自分でやっていけるとは思っていないんだよね。
会社が使ってくれる限りは頑張ろうと思うけど。』
この言葉を聞いて、私は悟った。
会社での仕事に関しては、私がこの上司より優れている点は、プログラミングなどのスキルを除いては殆ど無いだろう。
ただ、
『独立起業して自分で身を立てていく』
という独立独歩の精神については、私の方が圧倒的に上回っていると感じた。
つまり、この上司の優秀さはあくまでも会社員としてのものであり、独立起業してやっていけるかどうかは、また別の話なのだ、と。
この時私は、自分の前途に光が指したように思えた。
そして私は、独立起業後1年目から、この上司が当時もらっていると噂されていた収入を手にすることができ、2年目以降はそれを超えていった。
今、私が再びA社に戻ったとしても、この上司よりも圧倒的に仕事ができない自信がある。
それと同時に、
『独立起業後は仕事ができることと収入は比例しない』
ということも理解している。
つまり、現在の会社での評価に疑問を感じているという人はぜひ、会社から飛び出す勇気を持って欲しい。
<追伸>
あれから10数年が経過し、たまたま再び訪問することになった同ホテルのラウンジ。
私はある経営者に情報発信についてのコンサルして欲しいと言われ、アドバイスをするために訪問していた。
あの時に私が感じた『輝ける未来』は、嘘ではなかったのだ。