
「Obsidian×AIで第二の脳」で盛り上がっている人へ。Obsidianは1バイトも仕事をしていません
この記事のポイント
- ✓Obsidianは245MBの全文索引を持っています
- ✓ただしそれはElectronのプロセスの中に閉じていて
- ✓CursorやClaude Codeからは1バイトも使えません
ObsidianにAIを組み合わせて「第二の脳」を作る。
いま、この構成がよく紹介されています。Vaultにノートを溜めて、CursorやClaude Codeにそれを読ませる。過去の自分の知識をAIが検索して、必要なときに引いてくる。理屈としては魅力的です。
紹介している人の画面を見ると、正直、格好よく見えます。きちんと整理されていて、道具を使いこなしている人の机だな、と思います。
先に書いておくと、Obsidianは本当に良いアプリです。書いたものが互いに繋がり、検索は一瞬で返り、見返すのが楽しい。使っている人が満足しているのは当然で、私もそこを疑ったことはありません。これから書くのは、このアプリが劣っているという話ではありません。
私もその環境を用意しました。そして、ほとんど使っていませんでした。
新しいツールを試す前に、なぜ使わなかったのかを測ることにしました。その結果として、いま私はObsidianではなく自分で作ったMacアプリを使っています。何を測って、何が分かって、なぜ作ることになったのかを書きます。
141枚のうち、生きていたのは2枚
まず手元の状態を数えました。
Vaultには141枚のノートがありました。調べた時点で、直近3か月に触られていたのは2枚だけです。
残りの139枚は、置かれたまま動いていませんでした。増えてはいるが、参照されていない。誰も戻ってこない記録は、第二の脳ではなく物置です。
ここで問いを立て直しました。「ノートをどこに置くべきか」ではなく、「なぜ読まれなくなるのか」です。
Obsidianは、たしかに賢い索引を持っている
最初に疑ったのはObsidian自身の仕組みでした。独自のデータベースを持っていて、そのおかげで検索が速いのではないか。だとすればAIにも効いているはずだ、と考えたからです。
Vaultの中を見ても、あるのは素のMarkdownと設定用のJSONだけでした。データベースはありません。
索引はアプリ側にありました。
~/Library/Application Support/obsidian/IndexedDB/
app_obsidian.md_0.indexeddb.leveldb 245MB245MBあります。中を覗くと、ノートの本文がまるごと入っていました。しかも、これまでに開いたことのあるVaultが全部混ざっています。
Obsidianの全文検索が一瞬で返るのも、グラフビューが描けるのも、バックリンクがすぐ出るのも、この索引のおかげです。ここまでは想像どおりでした。
ところが、AIからは1バイトも見えない
問題はその置き場所でした。
これはChromiumのIndexedDBです。ObsidianはElectron製なので、ブラウザのストレージがそのままアプリのストレージになっています。
外から使えない理由は3つあります。
- プロセスの中から開く前提のストレージで、外部から接続してクエリを投げる口が無い
- Obsidianの起動中はロックがかかる
- 仮に読めても、鍵の構造はObsidianの内部実装であって、公開された仕様ではない
一方、CursorやClaude Codeがファイルを探すときにやっているのは、素のMarkdownに対する全文検索です。索引には触れません。
つまりObsidianが入っていようがいまいが、AIから見える景色は同じでした。Markdownが並んだフォルダがあるだけです。
「Obsidianを使っているからAIの検索が速い」という因果は、成立していませんでした。
AI側で効いていたのは、索引ではなく規約だった
では、Obsidian流のノートの書き方に意味が無いのかというと、そうではありません。
効いていたのは索引ではなく、索引を育てるために書き手が守っている規約のほうでした。
- フロントマターで属性を持たせる
- リンクで関連を張る
- 1ファイル1トピックにする
- ファイル名を検索語にする
これらは全部プレーンテキストです。だからAIがそのまま読めます。
言い方を変えると、規約はどのツールにも持ち運べますが、索引はどこにも運べません。Obsidianをやめても、書き方だけは資産として残ります。
もう1つ分かったこと。ノートが古びる理由
調べているうちに、同じVaultの中で状態が正反対のファイルが2つ見つかりました。
- 前日に更新されていた表
- 8か月前から止まっていた一覧
前者は開発で使う共通の割り当て表で、AIへの指示書に「使う前に必ず追記する」と書いてありました。後者にはそういう決まりがありませんでした。
止まっていたほうは5件を提示し続けていましたが、実際にはそのとき16件に増えていました。そして一度も「私はもう古い」とは言いません。開けば堂々と5件を返します。
同じアプリ、同じフォルダ、同じ形式のファイルです。違いは、書き戻す決まりがあるかどうかだけでした。
ノートが腐るのは、書き手が怠けたからではありません。書き戻す経路が用意されていないからです。
では、Vaultは何のためにあるのか
ここまでで、Vaultに置く理由は1つに絞られました。
自分の目で開いて確かめる必要があるとき、そのときだけです。
ところが私は、それすらしていませんでした。必要な資料はAIに出力させて、その場で読んでいたからです。
正直に測ってみると、Obsidianはそもそも起動していませんでした。440MBのアプリと245MBの索引が、使われないままディスクに座っていました。
本当の壁は、画面だった
なぜ開かなくなったのかを考えて、最後に残ったのは技術ではなく画面の問題でした。
ObsidianとCursorを、同時に開いてみてください。
どちらも、窓を1枚まるごと使う前提で作られています。横に並べた瞬間、ノートは読めない幅に潰れ、コードは折り返しだらけになります。ノートパソコンの画面では、まず成立しません。
結局どちらかを前に出して、もう片方を隠すことになります。そして切り替えるたびに、さっきまで何を見ていたのかを思い出し直すことになります。
1日に何度もこれをやっていると、だんだん開かなくなります。
なぜ私は、違う答えに行けたのか
ここが分かれ目だったと思います。
私はもともとサーバー側の人間です。20年以上、ターミナルの中で仕事をしてきました。いまも一日の大半を、そこでAIを動かしながら過ごしています。
ノートのアプリを中心に机を組む発想が、そもそも自分には無かったのだと思います。
だから、窓をうまく並べる方法を探すのをやめました。そもそも窓が3枚あることが問題ではないか、と考えたからです。
ファイルを見る窓。コマンドを打つ窓。AIと話す窓。1つの仕事のために、この3枚を毎日並べ替えていました。
3つを1枚の窓に入れた
そこで、ファイルとターミナルとAIを1枚の窓に入れたMacアプリを作りました。Atriensという名前です。
窓が1枚なら、並べ替えるものがありません。それが作った理由の全部です。
Obsidianから引き継いだものが1つだけあります。「どのフォルダがVaultか」という情報です。Obsidianはそれを自分の設定ファイルに持っているので、こちらは読み取り専用で読んで、最近開いた順にサイドバーへ並べています。Obsidianの設定は1行も書き換えません。
440MBのアプリと245MBの索引を起こさずに、素のMarkdownへ最短でたどり着けます。
優劣の話ではない
念のため書いておくと、これはObsidianが劣っているという話ではありません。
読んで考えることが仕事の人にとって、Obsidianは優れた道具です。書いた量がそのまま次の文章の材料になるので、蓄積は本当に複利になります。私が使わなくなったのは、私の出力が文章ではなく動くシステムだったからです。
人が読みに行く第二の脳と、AIが読んで人に喋りかけてくる第二の脳は、そもそも別のものでした。前者に要るのはビューアです。後者に要るのは、AIと同じ窓にいるファイルのほうでした。
Atriensは後者です。
作った経緯そのものは、製品サイトの開発ストーリーにも置いてあります。




