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ライフタイムで買ったブラウザが消えたので、同じ棚に自分の製品を並べました
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ライフタイムで買ったブラウザが消えたので、同じ棚に自分の製品を並べました

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平城寿
平城 寿(ひらじょう ひさし)
@SOHO創業者 / インディーハッカー

この記事のポイント

  • AppSumo で260本以上を買ってきた側です
  • 買い切ったブラウザが16か月で終了し
  • 代わりを10本試して見つからず

ここ数年、ソフトを「買い切り」で売る形が戻ってきました。

月額で積み上がっていく支払いに疲れた人が多いのだと思います。 AppSumo のようなサイトでは、本来なら年に何万円もするツールが、1回きりの支払いで永久に使える形で並んでいます。 私も買う側として何本も買ってきました。

この売り方は買う側にとって気持ちがいいものです。 ただ、1つだけ確かめようのない前提があります。

「永久」を保証しているのは、その製品を作っている人が明日もいることだけです。

16か月で消えた

2024年4月、私は AppSumo で Sidekick というブラウザの買い切り版を買いました。 定価としては $499 と表示されていて、その日の価格は $49 でした。 会員の割引が効いて、実際に払ったのは $44.10 です。

仕事で使うサービスごとにウィンドウを分けられるブラウザで、私はそこに全部のアカウントを積み上げました。

同じ年の12月、終了の告知が出ました。 期待した成長が得られず、事業として続けられなくなったという内容でした。

購入者には AppSumo のクレジットで全額が返金されました。 これは通常の保証の対象外の特別対応で、対応としてはむしろ誠実な部類だと思います。

ただ、手元に残ったのはクレジットであって、ブラウザではありませんでした。 積み上げた設定も一緒に消えました。

代わりが見つからなかった

近いものを10本以上試しました。

どれも惜しいところまでは来るのですが、私が必要としていた組み合わせにはなりませんでした。 仕事のアカウントごとに中身が完全に分かれていて、なおかつ Mac のターミナルがすぐ横にある、という形です。

それで自分で作りました。 SpaceDeck という macOS 用のブラウザです。

ここまでは、よくある話だと思います。 面白くなったのはこの先でした。

260本買ってきた側でした

先に立場を書いておきます。

私は AppSumo で260本以上を買ってきました。 出てくる買い切りを片端から買う、いわゆる重い客のほうです。 Sidekick もその1本でした。

長く買う側をやっていると、値段の付き方も、消える製品の共通点も、だいたい見えてきます。 ただ、それは見えるだけで、自分が作れるわけではありませんでした。

その前提が、ここ1年ほどで崩れました。

AI に書かせる開発(バイブコーディング)が実用になって、AppSumo に並んでいる製品の多くが、買うより自分で作ったほうが早い範囲に入ってきたからです。 消えたブラウザの代わりを自分で作れたのが、まさにそれでした。

そうなると、買い続ける意味が薄くなります。 代わりに、売る側をやってみたくなりました。

出す側に回ってみた

作ったものを、自分が損をしたのと同じ AppSumo に出すことにしました。

まず、そこに客がいます。 Sidekick の買い切り版を買った人たちは、いまクレジットを持っていてブラウザを持っていません。 その人たちが探している物を、私は自分のために作っていました。

それから、260本買った側として、あの棚で何が売れて何が売れないかを見てきました。 これは売る側に回って初めて、資産だったと気づきました。

そして、いちばん個人的な理由があります。

以前から「英語圏で商売を立てる」ことを目標に置いていました。 日本語のサービスは22年やってきましたが、英語圏ではずっと入口を探している状態でした。

AppSumo は買い手がほぼ英語圏で、決済も審査も英語で完結します。 ここで1本売れれば、それは英語圏で商売が立った最初の1本になります。 目標がようやく視野に入ってきた、というのが正直なところです。

出品の準備を始めて、外から見えていなかったことが2つありました。

1つ目。手取りが3.6倍変わる

AppSumo の取り分は、誰が客を連れてきたかで変わります。

売れ方こちらの手取り
自分で作ったリンク経由90%
AppSumo が売ってくれた分25%(売上が積み上がると30%、40%、50%と上がる)

この90%には下限がありません。 1本目から90%です。

$45 の製品なら、自分で連れてきた客は $40.50、AppSumo が売った分は $11.25 です。 同じ1本が売れても、手取りが3.6倍違います。

これが分かると、AppSumo の使い方が変わります。

AppSumo は集客の場ではなく、決済と信用を借りる場です。

買い切りのソフトを個人から買うとき、買う側がいちばん怖いのは「作り手が消えたら誰も返金してくれない」ことです。 AppSumo の棚に載っていれば、そこは AppSumo が引き受けます。 実際、私自身がそれで救われました。

だから正しいのは、自分のサイトやSNSから自分のリンクで AppSumo に送り込むことです。 買い手は安心して買えて、こちらは9割を受け取れます。

2つ目。「次の大型版は別料金」は、実務では守れない

買い切りで売るとき、作り手はたいてい逃げ道を用意します。

「いま買ったバージョンは永久に使えます。ただし次の大型アップデートは別料金です」

私も最初はそのつもりでした。 公式サイトの買い切り版はその条件で売っています。

ところが AppSumo のパートナー規約を読むと、24か月以内に実質的に同じ製品をもう一度出すときは、前に買った人にも同等以上の条件を与えることを求められます。 そしてその判断を下すのは AppSumo です。

つまり「2.x までです」と書いておいて、1年半後に 3.0 を有償で出す、という運びは通りません。 通らないものを書いておくと、そのときに揉めます。

なので、AppSumo に出す分は将来の更新を全部込みにしました。 公式サイトの買い切り版とは条件が変わりますが、書いていないことを後から言い出すよりましです。

買い手がいちばん知りたいこと

出品の画面には、商品説明とは別に「創業者からのメッセージ」を書く欄があります。 レビュー欄のすぐ上に出るので、買うかどうかを決める直前に読まれます。

ここに機能を書いてはいけません。 機能は上に全部書いてあります。

買い切りを買う人がその位置で知りたいのは、ただ1つです。

この人は、3年後もいますか。

私はそれを Sidekick で味わった側なので、書くことは決まっていました。

  • 自分も買う側として買って、消えた経験があること
  • 2004年から1人で会社をやっていて、いまも続いていること
  • 本業として、22年間ひとりで運営している登録30万人規模のサービスがあること
  • この製品は自分が毎日使っているので、誰も買わなくても保守されること

最後の1行が本体だと思っています。 「売れ続ける限り保守します」は約束になりません。 「自分が使うので保守します」は、売上がゼロでも成立します。

値付け

AppSumo 自身が「1コードあたり $49 を下回ると承認が通りやすい」と案内しています。 値上げは公開後にもできます。

Radar と呼ばれる区画に並んでいる買い切りソフトの価格を59本ぶん数えたところ、中央値は $59、幅は $19 から $179 でした。

決めたのは $45 です。 公式サイトの買い切り $129 はそのまま据え置きました。 公式の価格が下がってしまうと、そちらを見に来た人にとっては値崩れですし、AppSumo 側の割安感も消えます。

いまの状態

提出したのは2026年9月16日です。 審査は最大で1営業週間かかります。

売れたかどうかはこれからなので、結果はまだ書けません。 書けるのはここまでです。

同じように個人で買い切りのソフトを売っている人にとって、料率の話と規約の話は、出す前に知っておく価値があると思います。 特に料率は、知っているかどうかで手取りが3.6倍変わります。

引き換えの仕組みをどう実装したかは、技術寄りの記事に分けて書きました。

製品そのものはこちらです。

https://spacedeck.app

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#AppSumo#個人開発#ライフタイム#価格設定#SpaceDeck
平城寿
平城 寿(ひらじょう ひさし)
インディーハッカー。2004年に@SOHOを創業し、20年間1人で運営。
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