男の第二次就職活動(はじめての就職)

最終更新日時 2020/10/19 17:10

男は30代社長の助言に従い、
『一度も雇われなかった男』の称号を諦め、
一度就職することにした。

書店に言って就職雑誌を買い、
求人情報に目を通していく。

といっても、まだまだ

世界を動かすような事業をやってみたい!

という思いを捨てきれず、
なるべく事業の立ち上げに
関われるような仕事を探していた。

すると、面白い会社名を発見。
それも、

『ジャパン・ドリーム・ファクトリー』。

日本語に直訳すると、
『夢を創る』という意味になる。

この会社が事業立ち上げスタッフを
募集しているという。

早速応募してみた。

受付の方から電話があり、
面接に来て欲しいということだった。

面接に行ってみると、
オフィスはマンションの一室の中にあった。

呼び鈴を鳴らすと、受付の女性が出て来て、
応接室に案内してくれた。

最初に、受付の女性から
応募動機などを聞かれたので、
いつものとおり、

 

僕は事業をやりたいと思っています。
その修行のために入社したいと思いました!

 

と威勢よく答えた。

すると程なくして、
社長と思われる人物が帰ってきた。

中年太りで顔は浅黒く日焼けしたニキビ顔。
話し方はとてもぶっきらぼうだった。

社長は男から殆どヒアリングすることなく、
自分の夢を語っていた。

その内容もダイエーの創業者中内さんの
知り合いだとか、ダイエーの跡地を買収して
コストコを誘致するとか、
話の規模が大きすぎるので、男は

なんかスケールがでかい人だなぁ。

と感心してしまった。

社長の話をひとおおり聞いただけで、
採用が決まってしまった。。

男は拍子抜けしてしまったが、
とりあえず翌週からこの会社に通うことになった。

男は社長の正体が未知数だと感じながらも、
どんな事業に関われるのか?
期待に胸を膨らませながら、
初出社日を迎えた。

会社には一応、
リクルートスーツを着て行った。

会社に出社すると、
受付の女性も出社していたものの、
社長はいなかった。

男は何をすれば良いか女性に聞くと、
特に何も無さそうだった。

その代わりに、
この女性が社長のもとで働くようになった経緯を、
とくとくと聞かされた。

また、男がこの会社に応募した動機を、
根掘り葉掘り聞かれることになった。

男が工学部出身でメーカーの研究者に
成りたくなくて事業家への道を
歩んだことを伝えると、

女性は、

『畑が違うんじゃない?』
と一蹴されてしまった。

確かに、今男が進もうとしている道は、
一流大学の工学部出身といった学歴が
一切通用しない世界。

学歴を無駄にしている、
と思われたのかもしれない。

しかし男は、大学時代から決めていた。


社会のことなど全くの無知だった高校時代。

大学の進路も、当時の成績で
勝手に理系と診断され、
理学部か工学部かの判断においては、
担任から

工学部のほうが潰しがきいていいんじゃないか?

と言われ、工学部を志望。

大学は同じく担任との面談で、
偏差値で合格可能圏内にある場所を選択。

大学の進学は自分の意思で選択したというよりは、
いわゆる、
『敷かれたレール』に乗ったまでだった。

男が入学したのは、
九州大学工学部の機会系学科というところだった。

大学に進学してみて、
船のプロペラの研究だとか、
鉄の棒をどのぐらいねじったら壊れるかといった、
工学部の授業には一切面白みを感じなかった。

建築の世界には興味があったので、
一年生の途中に建築学科に
『転籍』できるかどうか、
学校側に確認してみた。

すると、1年留年することになるが、
一定の条件をクリアすれば可能だという。

男は、大学での勉強そのものに
意味を感じていなかったので、
1年留年するということは、
5年も大学に通うことになる。
それよりは、最短の4年で卒業して、
社会人になる時に、
自分が本当にやりたい仕事に就こう。
と考えていたのだった。

授業料は免除してもらっていたので、
大学には無料で行っていたのだけど、
やはり親孝行を意識して、
卒業だけはしようと考えていた。
もし大学に授業料を払って行っていたら、
途中で中途退学していたかもしれません。

と男は言う。

だから、学歴を活かした職につかないことに対して、
男は一切の未練がなかった。


そんな話をしているうちに、
社長が帰ってきた。

最初の仕事は、
社長がコストコを誘致しようと考えている、
福岡の糟屋郡の山奥の図面の調査だった。

社長はゼンリンの地図をテーブルに
『ドンッ』と置き、説明を始めた。

社長:

え〜と、場所は、おう、これだ。
ここだ。ここの図面をコピーして、
わかりやすく、色分けして塗ってくれ。

男は言われたとおり、
きっちりと仕事をこなした。

こうして、1日目が終わった。

2日目も、特に大した仕事は無かった。

社長は事務所を出払っていることが多く、
基本は受付の女性と2人きりだった。

3日目に入って、社長が言った。

社長:

おう、平城。現場を見に行くぞ。

男は胸が一段と踊ってしまった。
自分が塗り分けした図面の現場を、
直接この目で見れるというのだ。

しかも、いずれそこには
コストコが誘致される・・・。

事業が立ち上がる一部始終を、
これから体験できるかもしれない。

しかも現場はまだ林と田んぼしかない、
未開の土地だ。

男は社長の車の助手席に座らせられ、
現場へと同行した。

社長の運転はかなり荒かった。
信号と信号の合間を、
まるでゼロヨンのようなスピードで
駆け抜けていく。

社長は自分のことを、

俺はレーサーだからな。

と言っていた。

時々、レース場にも足を運んでいるようだ。
アメリカで開催されている
『nascar』のファンだとも言っていた。

そういえば、事務所にレースの写真が
いっぱい飾ってあったな・・・・。

男は社長の車好きを、
まじまじと実感したのであった。。

そうして現地に到着。

男は社長から渡されたデジカメを使って、
現場の撮影を行っていく。

まさに森と田んぼしかない山奥だった。

こんなところにショッピングセンターを作って、
本当に人が来るのだろうか?

と男は内心思いながらも、
(ここは社長を信じるしかない。)
とも思っていた。

そんな感じで、初めての現場視察は終わった。

翌週の月曜日、
今週はどんな仕事を任されるのか、
心を踊らせながら出社してみると・・・。

女性社員から、
1通の封筒を渡され、
しばらく自宅で待機しておいて欲しいと
説明があった。

なんと、男の給料が一時的に払えなさそうで、
社長が今工面しているから、
自宅で待機していて欲しいということだった。

実は、これまでも度々、
女性社員への給料未払いがあったりしたそうで、
遅れながらもなんとか給料を
払ってくれていたので、
女性社員もその都度我慢をしながら、
持ちこたえて来たそうだ。

また、うちじゃなくて
もっとしっかりとしたところで
働いたほうがいいんじゃないか、
的なことも女性から言われた。

封筒の中には、
1週間分の給料が入っていた。

結局、この会社からは、
その後連絡は無かった。

男の働きに満足が行かず、
首になった可能性はあるけれど、
男は、1週間社長の行動を見てきて、
確かにズボラそうなところが多々あったので、
資金繰りの件については本当なのだな、
と理解をした。

小さな会社であったし
僅か1週間の出来事だったので、
履歴書に書けるようなものではないが、
これが、男の社会人デビュー後、
初めての仕事の体験だった。

現時点でのITの割合:0%
男の全財産:10万円弱
男の借金:90万円(5年間のビジネスローン)

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